
素材に合わせた調理法が目白押し!『時間も食材も賢く使う 飛田さんの料理の工夫』
毎日の暮らしから生まれる、素材を生かしたシンプルレシピに定評がある、料理家の飛田和緒さん。
ここ数年は、味噌やアンチョビなどの保存食作りにも力を入れているという飛田さんの新刊『時間も食材も賢く使う 飛田さんの料理の工夫』が世界文化社より発売されました。

新型ウイルスが猛威を振るい、先行きが見えず不安を抱える中に発令された一度目の緊急事態宣言下、まさに飛田さんもこの本の準備の真っただ中にあったそう。
私たちの生活スタイルにも変化をもたらす中で、もっと賢く生活できないかを考え工夫を凝らしながら生活したという飛田さんの知恵が詰まった一冊です。
ちょっとの手間がむしろ時短になるという発想
仕事や家事、毎日忙しく働いていると、料理はなるべく時短に、そして楽に作りたいと思う方は多いと思います。
ですが、少しの手間を加え、素材に合わせた調理法を身につけることが、かえって時短につながると飛田さんは仰っています。
『時間も食材も賢く使う 飛田さんの料理の工夫』は、「野菜」、「卵・こんにゃく・豆腐類」、「肉」、「魚」、「乾物」、「毎日の暮らし」の全6章で構成されており、ひとつの素材をおいしく食べきるための扱い方や工夫が盛りだくさん! 今回は特別にその一部をご紹介します。
【野菜】キャベツはまるごとゆでる

どの野菜も、1本、1個とまるごと買い、小さいものはそのまま、食べきれないものはそのままではなく、下ごしらえをして冷蔵庫に収まるサイズにしてから保存が基本。
キャベツは生で食べる予定がないなら1個丸ごとゆでて食べきります。
芯を取り除き、大きめの鍋で丸ごとゆでるとはずしやすいそう。そうしてできた「ゆでキャベツ」は、簡単なロールキャベツで活用してみましょう。
ひき肉より簡単。中身はベーコンで「ロールキャベツ」

材料(4人分)
・キャベツ……1個
・ベーコン(かたまり、8等分に切る)……300g
・塩……ふたつまみ
作り方
1. キャベツは芯をくりぬき、ゆでて葉を1枚ずつはずし、16枚を準備。軸の部分は丸めやすいようにそぎ取る。2枚ずつ重ね、ベーコン、そぎ取った軸をのせてきつく巻く。
2. 鍋に1の巻き終わりを下にして並べ、すき間にくりぬいた芯を詰める。
3. 水2カップを注ぎ、ふたをして中火にかけ、沸騰してきたら弱めの中火で1時間ほど煮る。途中煮汁が少なくなったら、ひたひたになるまで水を足す。キャベツが箸で切れるくらいやわらかく煮えたら、塩を加えてひと煮する。

▲鍋の中にきっちりと並ぶのが理想。すき間があれば食べやすく切ったにんじん、ベーコンを詰めて煮る。
【肉】豚薄切り肉には塩をふって保存

様々な料理に活用しやすい豚薄切り肉は、パックに入ったまま肉の重量の1%の塩をふって「塩豚」に。ぴったりとラップをして保存します。そうすると、日持ちもして下味なしで調理できるとのこと。翌日からが食べごろだそうです。
まずは塩豚のうまみがごはんにしみ込む「肉巻きごはん」で味わってみては?
「肉巻きごはん」の材料と作り方(2人分)

1. 炊きたてのごはん1合分は8等分し、塩少々をなじませた手で、俵形または丸くにぎる。塩豚(好みの部位のもの)8枚を、1個に1枚ずつ巻きつけ、軽くにぎってなじませる。

▲おにぎり全体に塩豚を巻きつけ、最後は軽くにぎってなじませる。
2. フライパンに1の巻き終わりを下にして並べ、中火にかける。少し焼いてから転がして全体を焼く。肉に火が通ったら、しょうゆ、みりん各小さじ1~1と1/2を加え、転がして全体にからめる。
※肩ロースやロースだけで作る場合は、脂が少ないのでフライパンに少量の油をなじませてから焼きます。

▲巻き終わりを下にして焼きはじめ、肉がくっついたら転がしながら焼く。
【乾物】ひじきは1袋すべて戻し一度に調理

ひじきに限らず、高野豆腐や切り干し大根などの乾物を戻す場合は、1袋すべて戻し、一度に調理するのが飛田さん流。
封を開けた乾物は、取っておいてよいことは一つもない。だからおいしいうちに調理し、調理後は味を付けて冷凍する方が賢明だと気付いたのだそう。
ひじきはたっぷりの水に10分ほどつけたら、水を替えてよく洗い、ゴミなどを除きます。仕上げに熱湯に入れてさっとゆで、ざるに上げて水気を切れば、歯ざわりが戻るそうなのでお試しあれ。
ひじきとサバ缶のスパゲッティ

ひじきというと、煮物やサラダなどが定番の使い方でマンネリしがち……。
そこでぜひシェアしたいのが、戻したひじきをペーストにし、スパゲッティと和える活用法です。
余ったペーストはバゲットにぬってもおいしいとのこと。これは目からウロコ、すぐにでも試したいレシピです!
材料(2人分)
【A】
・ひじき(戻したもの)……80g
・しょうゆ……小さじ2
・スパゲッティ……180g
【B】
・さば缶(水煮)……1/2缶
・オリーブ油……大さじ2
・塩……適量
・青じそ(せん切り)……適量
作り方
1. 小鍋にAと水1/2カップを入れ、弱めの中火で15分ほど煮る。やわらかくなったら、フォークでねっとりするまでつぶす。
2. ボウルに1、Bを入れ、軽く混ぜる。
3. 熱湯2リットルに塩大さじ1を加えてスパゲッティを表示時間通りにゆでる。湯をきって2に加え、手早くあえる。味をみて塩少々でととのえ、器に盛り、青じそをのせる。
"飛田さんをもっと知りたい”に答えていただきました!
今回はほんの一部のご紹介でしたが、普段台所仕事をする中で感じていた疑問、例えば「使った揚げ油その後」ですとか、「いつもの野菜をもっとムダにさせないコツ」、ナンプラーやマスタードなど「残りがちな調味料の使い切り術」など、目からウロコの知恵ばかり。
更に今回、実際に読んでいく中で感じた疑問や興味を、飛田さんにお答えいただきました! 『おうちごはん』だけの特別コーナーです!
ーー食材の保存のテクニックが満載で、主婦歴10年の私でも新たな発見ばかりでとても勉強になりました。保存の際に愛用している容器があればぜひ教えてください。
野田琺瑯の琺瑯容器、イワタニのガラス容器、ジップロックのスクリュータイプを主に使っております。

▲ジップロックスクリューで生姜を保存
ーー様々な素材の容器を使い分けているのですね。早速作りたいレシピも盛りだくさんだったのですが、シンプルレシピにはよい調味料が欠かせないと思います。お気に入りの調味料をぜひ教えていただきたいです。
●沖縄粟国の塩……美しい沖縄の珊瑚礁の海からくみ上げた海水を丁寧に炊き上げて作られ、すべての料理、梅干・味噌・醤油などの加工品とも相性の良い塩。
●フランス・ゲラントの塩……フランスの中でも、陽射がおだやかなブルターニュ半島で作られるため、まろやか。
●大久保醸造所「紫歌仙」……大久保醸造店で、1年のうち期間限定でしか絞られない。3年熟成の濃口醤油。
●大久保醸造所「紫大尽」……シンプルで良質な原材料で作られた薄口醤油。味付けしやすい強すぎない味。
●鵠沼(くげぬま)魚醤……神奈川県藤沢市の素材を使用し、藤沢市の食品製造会社が製造、そして地元(藤沢市)でしか販売されていないという隠れた名品。
ーー最後に、「手前味噌」と答えてくださった飛田さん。手作りの味噌は、作り手や環境等によって違った味わいになるのが魅力的。飛田さんが作る味噌のお味、気になりますね。
ーー飛田さんのようなシンプルで洗練された台所仕事が理想ですが、 台所仕事での失敗談などはありますか?
最近は火をつけっぱなしでほかのことに夢中になって、空焚きしたり、焦がしたりが多くなったので、タイマーが欠かせません。
先日はオーブンで野菜を焼いていて、焼けたものから取り出して食べ、火の通りが悪いものは余熱で火を通そうと思ってそのままにしていたら、すっかりそのことを忘れて、翌日炭になったにんじんがオーブンから出てきました……。
ーーInstagramを拝見すると、毎日駅まで送る間の車内で娘さんが食べる朝ごはんとお弁当を拵えていらっしゃる飛田さん。お忙しい飛田さんだからこそのおちゃめで貴重なエピソード、ますます飛田さんに魅了されてしまったのでした。
飛田さん、ありがとうございました!
主婦と料理家の生活で培った知恵が満載
飛田さんが、三十数年の主婦生活と料理家として仕事を続けてきた二十数年の日々から生まれた知恵が存分に詰まった『時間も食材も賢く使う 飛田さんの料理の工夫』。
私はこの本に出会うまで、「おかずはなるべくたくさんの食材を使えばいい」と思っていたのですが、飛田さんの作るレシピはどれもシンプル。なのに決して地味でなく、どの食材も生き生きとしてみえるのです。
手間はむしろチャンスと捉え、常に食材の新しい楽しみ方を考えていらっしゃる飛田さん。あぁ、食材をおいしく食べるって、こういうことなんだなぁと痛感し、食材と向き合う考え方をよい方へと導いてくれました。
この本を手に取ったお一人お一人の台所仕事の悩みや疑問に寄り添い、そっと手を差し伸べてくれると確信しています。
飛田和緒(ひだ かずを)さんプロフィール

東京都生まれ。高校3年間を長野県で過ごす。現在は神奈川県の海辺の町で夫と娘の3人で暮らす。著書に『飛田和緒のおうち鍋』、『飛田和緒の郷土汁』(ともに小社刊)など多数。