土用は夏だけじゃない!
土用といえば「土用の丑の日」で知られる夏土用を思い浮かべますよね。
じつは、土用は年に4回あるんです。
春・夏・秋・冬、各季節の終わりの約18日間が土用と呼ばれる期間にあたります。
つまり、立春(2月4日頃)、立夏(5月6日頃)、立秋(8月8日頃)、立冬(11月7日頃)の前18日間のことを指します。
例えば、立秋が8月8日だとすると、夏の土用は、7月20日~8月7日まで。この18日間で、夏から秋へ移る準備をするのが土用期間です。
ひとつの季節を終わらせ、新しい季節に移るための期間
この土用とは、あらゆる事物や事象を木・火・土・金・水という五元素に基づいて考える古代中国哲学の陰陽五行説に基づいています。
季節を五行に当てはめると、「春=木、夏=火、秋=金、冬=水」となり、その季節の変わり目にあたる時期が「土用=土」となります。
土は命を生み出し、また命が還っていく場所。
土用は過ぎ去る季節を終わらせ、新しい季節に移るための期間なのです。
土用期間は胃腸を労わることが大事
土用は季節の変わり目。また、土用の「土」はからだで言うと「脾」にあたり、食べものを消化分解して、新たに全身に送る栄養素を生み出す消化器官全般のことをさします。
土用は季節の疲れが出やすく、消化器官である胃腸も同じように疲れが出やすくなるため、土用期間は胃腸を労わることが大切。
とくに夏の土用の時期は一年のなかでももっとも暑い時期。からだに疲れも溜まってくる頃でしっかりとケアが必要です。
暑いからつい冷たいものを摂りたくなりますが、あまり摂りすぎると胃腸が疲れてしまい、消化力が落ちてしまうので気を付けましょう!
土用に入ったら、消化に負担のかからないものや腸内環境を整えるものを意識して摂ることが大切です。
土用に食べるとよいおすすめの養生食
夏の土用といえば、うなぎですよね。もちろん高栄養価のうなぎもよいのですが、土用は胃腸のケアが要。
今回は胃腸を労わり腸内環境を整えるために摂りたい、土用におすすめの食べ物と料理例をご紹介します。
【自然の甘みのある野菜】
陰陽五行説で、脾(胃腸)を養う味は「甘み」と言われています。
かぼちゃやさつまいも、人参、玉ねぎ、とうもろこし、キャベツなど自然の甘みのある野菜は胃腸をやさしく整えてくれる食材です。この時期は積極的に摂りましょう。
また、甘みといっても、甘すぎる果物や砂糖をたくさん使ったお菓子類は逆に胃腸の負担になるので食べ過ぎには注意してくださいね。
胃腸を整える、キャベツとホタテの梅和え
胃腸を元気にする食材のなかでも一年を通して手軽に手に入るキャベツを使ったこちらの料理。
『おいしい漢方365』の著者で漢方アドバイザーの久保奈穂実先生が紹介されている一品です。
それぞれの食材の薬膳的効能の紹介を見てみると、ホタテや大葉にも胃腸を整える作用が。
・キャベツ:胃を健康にする、五臓の巡りを良くする、腎を補う、痰を除く、筋骨を丈夫にする
・ホタテ:胃腸を補う、肝腎を補う、潤いを補う、情緒を安定させる
・梅:潤いを生み出す、咳を止める、下痢を止める、止血
・大葉(紫蘇):寒さを散らす、体表の邪気を除く、気の巡りを良くする、胃腸の働きを整える、胎児を安定させる、解毒
作り方は投稿をチェックしてみてくださいね。
ホタテ缶がない場合は、気血を補い巡りをよくする作用が期待できるしらすに変えるのもおすすめです。
【黄色や中間色の野菜】
「土」は色で言うと「黄色」に対応しているので、黄色や中間色の野菜もおすすめです。
気を補ってくれるじゃがいもや、とくに夏の土用時期には余分な水分を排出してくれるきゅうりや冬瓜などウリ科の野菜を摂り入れて、からだの内側のバランスを整えましょう。
元気を補いお腹にパワーをくれる、じゃがいものガレット
◐ じゃがいも:脾胃の働きを助けてくれるので食べたものを栄養にしっかり変える手助けをし、その栄養がエネルギーの源に。やる気出ないさんに。元気を補います。
◐ タイム:香りの良いハーブ類は全般、気巡り食材。タイムは体の水巡りもよくしてくれるので、気分も体もなんだか詰まりを感じる・だる重さを感じる、なんて時には両方をリフレッシュしてくれます。
おいも、ちょっとおなかが張る・・・という人は巡り食材を合わせて胃腸を動かしてあげてね。
そう紹介されているのは、国際薬膳師であり、薬膳教室を開催しているサカイキミエ先生。
こちらのガレットは千切りしたじゃがいもに塩とタイムを加えてフライパンで焼くだけ!
暑さで元気が出ないときでも簡単に作れるおいしい養生食です。
【発酵食品】
腸内環境を整える善玉菌を多く含む発酵食品も、土用期間にはとくに意識して摂るとよいですよ。
味噌や塩麹、甘酒などの調味料からぬか漬けや納豆といった食べものまで、いろいろと取り入れてみてくださいね。
腸内環境を整える、かぼちゃと甘酒のポタージュ
こちらは気を補うかぼちゃと発酵食品の甘酒を使った久保奈穂実先生のポタージュ。
薬膳的効能については、以下のように述べられています。
・かぼちゃ:お腹を温める、元気を補う、痰を除く
・甘酒:元気を補う、お腹を整える、潤いを生み出す、血の巡りを良くする、便通を良くする
自然な甘みのやさしいポタージュは、からだだけでなく気持ちもほっこりと元気にしてくれそうですね。
【とろみのある料理】
胃腸ケアにはとろみのある料理もおすすめ。葛を使ったり、コトコト煮たスープもいいです。
冷房などで冷えがちな夏のからだにとろみのある温かい食べ物は冷めにくく、からだを内側から温めてくれます。
やさしいとろみで胃腸を癒す、冬瓜と葛のスープ
やさしいとろみがつけられる葛ですが、「葛に含まれるでんぷんは他のものよりでんぷんの粒子が細かく、消化時に胃腸に負担がかからないんです」と、サカイキミエ先生。
整腸作用もあるので、胃腸ケアにはうってつけの食材なんです。
また、それぞれの食材について薬膳的な食養のポイントを教えてくれました。
◐ 冬瓜:夏バテ対策の代表、瓜類の一つ。体の熱を冷まし、余分な水を取りながら
一方で渇きを潤してくれます。
◐ 鶏肉:おなかの冷え対策、疲労回復に。夏は冷たいものを摂りがちで実はお腹が冷えていることも。暑さによって気も消耗されるので補うことも忘れずに。
◐ 黒きくらげ:キレイな血を作る食材の一つ。血を補い、巡らせてくれます。体に潤いももたらしてくれます。
◐ 葛:体の余分な熱を取り除く働きを持ちます。筋肉を潤し肩や首のコリを取り除く力も。
季節の疲れが出始めるからだと胃腸は、とろみのあるやさしい食感とその時期におすすめの食材で労わってあげたいですね。
土用を上手に使って健やかに過ごしましょう!
土用の間にしっかりと胃腸のケアをすることで、次の季節を快適に過ごせると言われています。
夏の土用に胃腸を冷やさず暑さを乗り越えるからだづくりをすることで秋冬の季節もからだが冷えすぎず快適に過ごせるようになります。
また、冬の土用は胃腸を整えて血流を良くすることはもちろん、自然の動植物が休むように人間もしっかりと休息をとることで次の春夏に生き生きとからだを動かすことができるようになります。
一年を通して、健康で元気に生活するためにも、土用の過ごし方は大切。ぜひ参考にしてみてくださいね。