薬膳って実は簡単!「体にいい 思いやり献立 」で不調知らずの体を目指そう

近年、注目が高まっている「薬膳」。よく耳にするようになったものの、日々の生活にどう取り入れてよいか分からないという方もいるのでは?実は身近な食材や調味料でも作れるから、難しく考えなくて大丈夫なんです!料理家で国際中医薬膳師の齋藤菜々子さんに、いつもの食材で体調バランスが整う「シンプル薬膳レシピ」を教えていただきました。

不調のない体をつくる「献立」とは?

写真/新居明子

2025年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた「薬膳」

流行の火付けになったのはNHKドラマ「しあわせは食べて寝て待て」で、健康も仕事も失った主人公が、団地の住人や薬膳料理との出会いを通じて自分らしい生き方を見つけていく物語が共感を呼びました。また、同じくノミネートされた中国発祥の薬膳スープ「麻辣湯(マーラータン)」もZ世代の女性を中心に人気を集めています。

薬膳ってドラマの中で見たり、お店で食べたりするもので、自分で作るには難しそうというイメージがありませんか? でも、薬膳献立レシピ集『体にいい 思いやり献立』(ワン・パブリッシング)の著者で料理家・国際中医薬膳師の齋藤菜々子さんによると、それは全く違うそう!

「薬膳って実は“大らか”。細かい栄養素の知識もいらないし、身近にある食材でおうちでも十分作れるんですよ」(以下、齋藤菜々子さん)

菜々子さんはもともと大学卒業後に一般企業に就職。忙しさから外食中心の食生活を送る中、心身ともに不調を感じたことで食の大切さを実感したといいます。そんなときに出合った「薬膳」は、「風邪にはこの食材がよい」「元気をつけるならこの食材がよい」という食材の提案だけで「1日にこれぐらい食べなきゃいけない」というノルマもないことが、当時、栄養学の知識がなかった菜々子さんにも分かりやすく感じたそう。

「中医学(中国伝統医学)の考えでは、薬膳って不調がある人だけでなく、不調にならない体をキープしたい人にとっても助けになるもの。いま、不調がない人にとって『これぐらい食べなければいけない』というノルマがあったら、なんだか腰が重くなってしまいますよね。でも、たとえば『寒い時期だったらこういう食材を食べた方がよい』ということだけ知っていれば、普段の生活にも無理なく取り入れられると思うんです」

寒い時期は、血流が悪くなったり、冷えたり、便秘になったり、乾燥が気になったりと、さまざまな不調が起こりがち。それらを予防・改善するのにおすすめな食材には下記のようなものがあるそう。

【血流改善】
鮭、しらす、玉ねぎ、なす、にら、ししとうがらし、辛し

【冷え対策】
鶏肉、かぼちゃ、長ねぎ、にんにく、しょうが、玉ねぎ、にら

【便秘改善】
ごぼう、春菊、ほうれん草、オクラ、アボカド、白菜、きのこ類、さつまいも、こんにゃく、納豆、白ごま

【乾燥対策】
豚肉、卵、アスパラガス、オクラ、トマト、れんこん、長いも、さつまいも、エリンギ、梅干し、豆腐、牛乳、はちみつ


大切なのは、いろいろなものを適量ずつ、バランスをとりながら日々の食事をすること。そのためにおすすめなのが「献立」なのだとか。メインや副菜、汁物など、料理を組み合わせて食べる献立なら、ひとつひとつがシンプルだとしても、一食でさまざまな食材をとることができます。

そこで、寒さがますます厳しくなる今の時期にぴったりの献立を2つ教えていただきました!

鶏肉とねぎのキーマカレー献立

効能:冷え対策、血流改善

年末年始に洋食、和食のごちそうが続いて、そろそろカレーが食べたくなるころではないでしょうか? そこでおすすめなのが、トマトの酸味がさっぱりしていておいしい「鶏肉とねぎのキーマカレー」をメインにした献立です。

「キーマカレーには、薬膳でいうところの“温熱性”の食材をたっぷりと詰め込みました。鶏肉、長ねぎ、しょうが、カレー粉がそれにあたり、冷え対策に役立ちます。和食っぽいエッセンスを入れたくて長ねぎやしいたけを使っていますが、玉ねぎやほかのきのこで代用してもらってもOKです。また、鶏ももひき肉ではなく、鶏むねひき肉を使っていただいても効能は変わりません。豚ひき肉や合いびき肉だと効能は変わってきますが、おいしく作れると思います。作り置きや冷凍にも向いていますし、汁けがないのでお弁当にもおすすめ。気が向いたときや材料があるときに作ってみてください」

副菜の「玉ねぎのアチャール」はレンチンでパパッと作れるのもうれしいポイント!

「とても簡単に作れるので、ちょっと疲れているときにもおすすめなレシピです♪ 玉ねぎも血流改善に役立つので巡りがよくなって肌ツヤ、髪、爪、目の養生にも!」

鶏肉とねぎのキーマカレー(冷蔵2~3日)

材料(2人分)

・温かいごはん……2杯分
・鶏ももひき肉……200g
・長ねぎ……1本(100g)
・トマト……1個
・しいたけ……2枚
・しょうが……1かけ

【A】
・水……50ml
・酒、カレー粉……各大さじ1
・しょうゆ……大さじ1/2
・中農ソース……小さじ1
・塩、砂糖……各小さじ1/2

・サラダ油……大さじ1/2

作り方

1. 長ねぎは縦半分に切り、端から5mm幅に切る。トマトは1.5cm角に切り、しいたけは石づきを切り落として粗みじん切りにし、しょうがはみじん切りにする。

2. フライパンにサラダ油、1のしょうがを中火で熱し、香りが出たら長ねぎ、トマトを加えて炒める。トマトが崩れて水っぽさがなくなってきたら、ひき肉を加えて炒め、ひき肉の色が変わったらしいたけを加えてしんなりするまで炒める。

3. Aを加え、煮立ったらふたをして弱めの中火で5分ほど煮る。ごはんとともに器に盛る。

おいしさPoint

フライパンに具材を入れたら、トマトの汁けがとぶまでしっかり炒めてください。うまみが凝縮され、ルウなしでもおいしいカレーに。

玉ねぎのアチャール(冷蔵4~5日)

材料(2人分)

・玉ねぎ……1/2個(100g)

【A】
・レモン汁……大さじ2
・砂糖……小さじ1
・塩、カレー粉……各小さじ1/2
・オリーブオイル……大さじ1

作り方

1. 玉ねぎはひと口大に切る。耐熱皿に広げ、ふんわりとラップをかけて電子レンジ(600W)で1分30秒加熱する。ボウルにAを合わせてよく混ぜる。

2. 1のボウルに玉ねぎを加えてよく混ぜ、表面に密着するように落としラップをしてそのまま30分以上おく。

鶏肉ときのこのクリーム煮献立

効能:乾燥対策、便秘対策

寒い時期はクリーム煮のような、こってりとした料理がおいしく感じられますよね。こちらの「鶏肉ときのこのクリーム煮」をメインにした献立はおいしいだけじゃなく、空気の乾燥による不調や便秘などのお悩みを改善したい人にもぴったりです。

「乾燥と便秘の対策におすすめなのが、乳製品ときのこです。『鶏肉ときのこのクリーム煮』には牛乳と生クリームを使用していて、しめじとまいたけを入れています。きのこは、エリンギに替えてもらってもよいですし、しいたけのような香りが強いものを入れてもおいしいだろうなと思います。鶏肉はむね肉を使用しているのですが、もも肉で作っていただいても大丈夫。ただ、むね肉よりも厚みがあるようであれば、加熱時間を1、2分延ばすなどして、しっかりと火を通してくださいね」

副菜の「れんこんとパルメザングリル」は、薬膳献立レシピ集『体にいい 思いやり献立』(ワン・パブリッシング)の撮影スタッフにも好評だったメニューなのだとか。

「オーブントースターで作れるのですごく簡単ですし、れんこんと粉チーズがあったらぜひ作ってほしいです! 焼けた粉チーズが香ばしくて、おつまみにもぴったり。ワインとかに合うと思います。れんこんも潤いを補ってくれる食材なので、乳製品のチーズと合わせて乾燥対策はバッチリです」

鶏肉ときのこのクリーム煮(冷蔵2~3日)

材料(2人分)

・鶏むね肉……1枚(300g)
・しめじ……1/2株
・まいたけ……1株
・玉ねぎ……1/4個(50g)
・塩、こしょう……各少々
・薄力粉……大さじ1

【A】
・にんにく(すりおろし)……少々
・牛乳……150ml
・生クリーム(乳脂肪分35%)……100ml
・塩……小さじ1/3

・オリーブオイル……大さじ1
・パセリ(みじん切り)……適宜

作り方

1. しめじは石づきを切り落としてほぐし、まいたけは食べやすい大きさにほぐす。玉ねぎは薄切りにする。鶏肉は縦半分に切ってから1cm厚さ、食べやすい大きさのそぎ切りにし、塩、こしょうをふり。薄力粉をまぶす。Aは合わせて混ぜておく。

2. フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、1の玉ねぎ、しめじ、まいたけを入れて炒める。しんなりしたらAを加えて煮立たせ、鶏肉を加える。煮立ったら鶏肉を時々返しながら弱めの中火で5~6分、火が通るまで煮る。

3. 器に2を盛り、お好みでパセリをちらす。

おいしさPoint

鶏肉の全体に薄力粉をまぶしておくと、加熱してもパサパサにならず、ほどよいとろみもついておいしさもアップ。

れんこんのパルメザングリル

材料(2人分)

・れんこん……大1節(200g)
・粉チーズ……大さじ2
・塩……小さじ1/4
・粗びき黒こしょう……適量
・オリーブオイル……大さじ1と1/2

作り方

1. れんこんは1cm幅の半月切りにする。

2. ボウルに1、オリーブオイルを合わせて混ぜ、全体に油がまわったら塩、粗びき黒こしょうを加えて混ぜる。バットや皿など平らなものに粉チーズを広げ、れんこんの表にくる面を押し付け、粉チーズを密着させる。

3. オーブントースターまたは魚焼きグリルの網の上にアルミホイルをのせ、2のチーズの面を上にして重ならないように並べる。200℃または弱めの中火で焼き色がつくまで9~11分焼く。

もっと知りたい!薬膳のこと

ここまで読んで、「薬膳のことがもっと知りたくなった!」という方も多いのでは?

あらためて薬膳とは、「中医学の考えに基づき、食べる人の季節、体質、体調に合わせた目的をもち、食材選びをされた料理」のことです。

中医学の基本的な理論は、陰陽五行説に基づいて、木火土金水という自然界の特性に合わせた季節(四季+雨季)や人体の「五臓」が割り振られています。これらは独立した存在ではなく、互いに影響を及ぼし合っており、その関係性が示されているのが、下記の図です。

たとえば冬の「五臓」は、「腎(じん)」。腎は腎臓を直接示すのではなく、生命力生殖機能を司るもの。水分を貯蔵し排泄する重要な役割を担っています。腎が弱ると、さまざまな影響が出るのだとか。

「生命力や生殖機能に関わっている腎が弱くなると、いわゆる“老化”といわれる個所に不調が出やすくなります。冬場だと腰痛や関節痛が起こりやすかったり、耳が聞こえづらくなったり……。あとは排尿障害ですね。冬って寒いとトイレが近くなると思うのですが、その分、水分代謝にも深く関わっている腎に負担がかかって弱りやすくなります。冬は下半身を中心に温めてもらった方がいいです」

陰陽五行説では、腎の働きを助ける色として「黒」が配当されていて、黒い食材をとると体を整えられると考えられているそう。

「黒い食材とは、黒豆、黒ごま、しいたけ、きくらげ、黒米などです。たとえば、普段食べているお米に黒米をちょっと入れて炊いていただくとか、いつもは白ごまで作っているごま和えを黒ごまに替えてみるとか。あとは、黒豆を乾煎りして黒豆茶にするのもおいしいですよ。お正月に買った黒豆が余っているという方は、お茶にするのもおすすめです」

▲玄米もち、黒米甘酒のおしるこ(齋藤菜々子さんのInstagramより)

薬膳はゆる~く続けても大丈夫!

中医学の考える健康は「バランスがとれ、巡りのよい状態であること」。過剰になったり不足したりすることなく、臓が正常な働きを果たしている状態を指します。過剰なものは取り除き、不足していれば補う。余分な熱は冷まし、冷えれば温める。ニュートラルな状態を目指すことが、中医学においての養生や治療方針の基本です。

「薬膳の教えは“ごはん”なので、効果は薬ほど劇的ではないんですよね。食べてすぐに不調がなくなったり、体質が変わったりすることはないので、続けることが大事です。でも、できない日もあっていいんです。外食したい日や、食べたい物を思いのまま食べたい日もあるじゃないですか。ただ、その時々の季節や自分のお悩みに対してよいものを頭の片隅においておいてもらって、とれるときにとっていく。そんな風にゆるくやっていった方が長く続いて、その結果、体が整っていくと思います。とにかく気負わないことです。なんて、私自身がストイックに頑張れるタイプじゃないからっていうのもあるんですけどね(笑)」

「体にいい 思いやり献立 」がお役立ち!

齋藤菜々子さんの最新著書『体にいい 思いやり献立』には、今回ご紹介したレシピのほか、いつもの食材で体調バランスが整うシンプル薬膳レシピが盛りだくさん!

食べごたえのあるヘルシーな一汁三菜や、忙しい日でもさっと作れる栄養バランスのとれた2品献立、すぐに食べられる主菜と作りおきもできる副菜を組み合わせた献立など、99品が掲載されています。

しかも、いまある不調や効能から選べるよう、便利なアイコンつき。便秘改善、むくみ解消、乾燥対策など体の体調に合わせて必要なものを選ぶほか、乾燥する秋冬など季節ごとの不調や予防で選ぶのも◎。

ライフスタイルや好みに合わせて、自由に組み合わせながら取り入れてみてはいかがでしょうか!

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齋藤菜々子さんプロフィール

料理家・国際中医薬膳師。夫と愛犬アルと暮らしている。飲食店経営の両親のもとに育ち、大学卒業後一般企業に就職。忙しい日々の中で食事が心身の充実につながることを実感し、料理の道を志す。料理家のアシスタントを務めながら日本中医食養学会・日本中医学院にて中医学を学び国際中医薬膳師の資格を取得。「今日からできるおうち薬膳」をモットーに、身近な食材のみを使った作りやすいレシピにこだわり、家庭で毎日実践できる薬膳を提案している。著書に『基本調味料で作る体にいいスープ』(主婦と生活社)、『心と体をおいしく満たす バテないごはん』(世界文化社)ほか多数がある。

齋藤菜々子さん(@nanako.yakuzen)のInstagram

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