今年は暖かいせいか、既にスーパーには様々な春野菜が並んでいて、すっかり春を感じられるようになりましたね。ウキウキする反面、春先はなんだかすっきりせず、不調を訴える方が多い時期です。

春に向けて急に暖かくなってくると、めまいや頭痛、のぼせ、イライラ、情緒不安定など、様々な不調が現れます。最近では「寒暖差疲労」という言葉もあるようですが、寒暖差がひどいと自律神経の負担が大きくなってバランスが取れず、だるさ、疲労感も増してきます。

中医学では、「肝」を傷めるとこのような症状が現れると考えます。肝は現代医学でいう肝臓であり、同時に情緒、自律神経、目、筋肉にも関係する臓器です。そのため、この時期には目の疲れが気になる方や足の筋肉がつる方もいらっしゃるかもしれません。

情緒に関係する肝を傷めると気も滞りがちになるので、香りの良いハーブや旬の柑橘で気を巡らせることもよいのですが、肝が正常に働くようにケアして不調を軽減するセロリ、せり、ピーマン、トマトなどが特におすすめです。

今回のお料理には、そんなセロリに新タマネギ、ディル、クミンシードを合わせたエスニックソースを添えています。タマネギ、ディル、クミンシードは気の巡りに良い食材で、さらにディルは肝にも働きかけます。

情緒不安定な時やストレスを感じている時は食欲が落ち、食べてもうまく消化できないといったことがありますが、肝を傷めて情緒不安定になっているときも同じです。しゃぶしゃぶだとあっさりして消化にもよく、タマネギ、ディル、クミンは食欲を起こさせる働きもしますし、消化促進にも良い食材です。

今回ご紹介するエスニックソースは大根おろしのようなぽってりしたものなので、和え衣のようにも使えます。

メインのお料理には牛しゃぶがおすすめですが、トマトを一口大にカットしてその上にのせてもよいですし、あさりの酒蒸しに添えてもよし！　どちらもとても効果的です。
ソースだけで効果が期待できるので、ぜひいろんなお料理に合わせてみてください。

・牛肉すき焼き用（ロース、もも、切り落としなど）……150ｇ
・セロリ……1本
・新タマネギ……1/2個
・クミン（シード）……小さじ1/4
・エキストラバージンオリーブオイル……大さじ1/2
・塩……ひとつまみ

【A】　　
・コショウ……少々
・ナンプラー……小さじ1
・ディル……1枝（粗みじん切りにして大さじ1くらい）
・レモン……適宜

1. セロリは、葉をみじん切りにし、軸は筋を取ってからすりおろしてザルに移して自然に落ちる水分を切る。

新タマネギもすりおろし、すりおろしにくい部分はみじん切りにし、ザルに移す。ディルは粗みじん切りにする。

2. 小鍋にエキストラバージンオリーブオイルとクミンを入れて熱し、1の新タマネギを加えてねっとりするまで弱火で炒める。すりおろしたセロリを加えてさらに炒め、Aの調味料を加えて軽く煮た後、セロリの葉、ディルを加えて火から下ろす。

3. 80℃くらいの湯に分量外の酒を加え（一度しっかり沸騰させてから火を止めるとよい）、牛肉を1枚ずつ入れてしゃぶしゃぶする。
ピンク色の状態で鍋からあげて、ペーパーなどにとった後、器に盛り、2をかけてレモンを添える。もし煮詰まりすぎた場合は牛肉の茹で汁少々を加えてのばす。

どの季節も旬の食材のパワフルさを感じますが、芽吹きの春はその効果だけでなく、種類の多さにも圧倒されます。
春の山菜などは調理に不安なかたもいらっしゃるかもしれませんが、ぜひこの時期ならではの食材を手に取ってみてください。中でも肝に働きかける食材で一番取り入れやすいものはいちご！　これなら手が伸びますよね。

また、春は暖かくなってふわ～っとすることや、ぼんやりすることがありますが、適度に酸味のものを摂ると、その引き締め作用で緩和されます。今回のお料理にも添えているレモンはナンプラーにもよく合うのでたっぷり搾って召し上がってみてください。