天保元年創業。茨城の老舗「吉田屋」の梅

おいしいモノが大好きなおうちごはん編集部とその仲間たちが、日本全国のおいしいモノを発見する企画『ニッポンのおいしい、いただきます!』。今回ご紹介するのは、茨城県にある老舗「吉田屋」が手掛ける梅商品たち。こだわりがたっぷりと詰まった茨城の梅や吉田屋の先進的な取り組みについてもたっぷりとご紹介します。

茨城の老舗「吉田屋」の梅商品の魅力に迫ります!

食欲&物欲旺盛なおうちごはん編集部とその仲間たちが、日本全国にある「おいしいモノ」を発見していく連載企画『ニッポンのおいしい、いただきます!』。まだまだ知られていない日本のおいしいモノを紹介していきます。

今回ご紹介するのは、茨城県の大洗町にある老舗「吉田屋」が手掛ける梅商品たち。種類豊富な梅干しは、一つひとつにこだわりと愛情がたっぷりと詰まっています。

「茨城=梅」のイメージがないという方も多いかもしれませんが、「吉田屋」の梅干しを知れば、新しい梅の魅力に出合えること間違いなし!

今は大人気となった茨城県の梅ブランドができあがるまでの苦労や、新たにチャレンジしている取り組みなどについてもたっぷりとご紹介します。

創業191年「吉田屋」

梅干・奈良漬・らっきょう・生姜等の漬物製造販売業として、「吉田屋浅吉商店」の屋号で営業をスタートしたという「吉田屋」。天保元年の創業以来、200年近くにわたって茨城の地でその味を守り続けてきました。

この「吉田屋」の長年にわたる取り組みや、これからの未来を見据えた新たなチャレンジなどについて、今回は八代目の大山壮郎さんにお話を伺いました。

茨城県初の梅ブランドをつくる「常陸乃梅プロジェクト」

梅の全国シェアは、和歌山県の南高梅が7割を占めて第1位。第2位は群馬県で、第3位は三重県です。

では茨城県は……というと、梅の作付面積は全国で第3位なのに、出荷量はトップ10にも入っていないんです……。

梅の名所として人気を集める水戸の「偕楽園」には、毎年全国から多くの観光客が訪れているなど、茨城の観光の目玉として欠かすことのできない梅ですが、実はこういった観光地で販売されているさまざまな梅製品もその原料となる梅のほとんどは、かつては茨城産ではなかったんだそう。

なぜかというと、茨城では梅の生産量は多いものの、その一次加工を苦手としており、手のかかる一次加工をせずに青梅だけを市場に出荷していたから。

そのため、行き先のない梅のほとんどは手つかずのまま自然落果させていたんだそうです。

▲吉田屋の八代目大山壮郎さん

観光的には梅が目玉であったにもかかわらず、せっかくの実りを十分に活かすことができていないという状況を見て、大山さんは一念発起。茨城の梅を加工して商品として売り出すべく、大山さんの「常陸乃梅プロジェクト」の奮闘がはじまりました。

三種の宝珠との出合い

新しいことをはじめるというのは、何事においても手間がかかって面倒なもの。それは、大山さんたちにとっても例外ではありませんでした。

梅の加工をすべく立ち上がった大山さんにまず立ちはだかった問題は、どこから原料となる茨城の梅を調達するのかということ。今までやってこなかったことをやるということは、農家さんたちにとってもハードルは高い。まずはそのハードルを乗り越えてくれる仲間探しからはじめなければなりません。

そんなときに出会ったのが、JA土浦「千代田梅部会」の皆さんと、「露茜」という新品種。

「露茜」は、燃えるような茜色の果肉が特徴的な珍しい品種の梅です。この梅をどんな風に使ったらいいのだろうと悩んでいた「千代田梅部会」の皆さんのお悩みを受け、商品開発に乗り出しました。

ちょっとした傷や焼けがある梅や熟した梅は青梅として出荷ができません。それらの未良品の活用という視点も踏まえて考えて、開発期間を2年ほどかけて開発した商品が、「Pure Sweet」という梅シロップ。「露茜」の鮮やかな赤色を活かしたシロップは、現在では大手菓子店のお菓子作りに使われるなど、大人気の商品となりました。

そしてその後、様々な品種を比較検討した結果、4Lサイズの大粒の実が生る「加賀地蔵」と、受粉樹として植えられていた「石川1号」の2種類の梅に注目。梅農家の皆さんと共に、3種類の梅の特性を最大限に活かす商品開発に取り組むと同時に、梅栽培におけるシステムの変更にも着手。大変なチャレンジとなりましたが、あらゆる問題点を克服し、できあがった商品も高く評価されるようになりました。

現在は、「常陸乃梅」の品質を誇りに感じながら、今後さらに生産量を増やしていくために更なる取り組みにチャレンジしています。

本物の味覚をお届けするために

吉田屋の梅干しづくりは、すべて手作業で行われています。

数種類の天然塩を使い分け、それぞれの塩分濃度で漬け込みます。

全ての調理器具は加熱殺菌したものを使用するなど徹底した衛生管理を実施。これによって、添加物を加えることなく、通常では考えられない低い塩分濃度を実現することができたんだそうです。

一般的には、300kg~1tの量の梅干しを一度に作るそうなのですが、吉田屋の製法の場合には一度に大量に作ることができないため、25kgで作るとのこと。どれだけ丁寧に手間暇をかけて作っているのかということがよくわかります。

これだけしっかりとこだわりぬいた製法を守り抜いているからこそ、多くのファンが愛してやまない梅干しが完成するんですね。

吉田屋のおすすめ商品

吉田屋の梅商品は、梅干しだけでも種類がたくさん! これは、梅愛好家のみなさんも納得のラインナップです。

全部ご紹介したいところではあるのですが……こちらでは、特に人気の高いおすすめ商品をピックアップしてご紹介します。

無添加へのこだわり 老舗八代目にして極めた逸品 八代目

独自の方法で衛生管理を徹底することにより、長年の悲願であった防腐剤等を一切使用することなく10%という低塩分濃度を実現。高品質な梅をミネラル豊富で味わい深い赤穂の塩で漬けました。目の覚めるようなきりりとした酸味が特徴です。

梅干し愛好家も満足する爽やかな酸味は、塩だけで漬けたからこその自然な味わい。料理にも合わせやすく、一度食べたら他にはいけなくなると多くのファンがついている商品です。

八代目 | 創業天保元年 吉田屋

梅ここに極まれり 味わい深い至高の一粒 茨城の賜

茨城県かすみがうら市が育成地指定されている茨城プレミアム品種の加賀地蔵は、大粒で皮が薄く身はやわらかく、濃厚な味わいが特徴。南高梅以上とも言われてる品質を堪能できる梅干しです。沖縄県産シママースというまろやかな塩を使い、無添加で仕上げた梅干しの食べ終えてなお口中に漂う梅の後味をぜひ一度味わってみてください。

茨城の賜 | 創業天保元年 吉田屋

吉田屋伝統の看板商品 梅の風味を活かした調味 三年梅

根強い人気を誇る三年梅。熟成させているので、塩が馴染んでまろやか。梅の風味をそこなわない淡い味付けをした調味梅干しは、食べやすくて飽きのこないおいしさです。大粒で身が柔らかく、料理への活用の幅も広がります。

三年梅 | 創業天保元年 吉田屋

Pure Sweet

梅と砂糖だけで作られた健康的なシロップ。鮮やかな紅色は露茜、淡い方は青梅の自然な色あいを活かして作られています。水、炭酸、お湯などで割って楽しんだり、お酒と合わせてカクテルにするのもおすすめ。また、ゼリーやお菓子の素材としても美味しく活用できます。

Pure Sweet | 創業天保元年 吉田屋

全国初の梅専門カフェ「ume cafe WAON」

大山さんのチャレンジは、商品開発のみにとどまりません!

2014年4月には、日本初となる梅専門カフェ『WAON』をオープンしました。

奥深い梅の魅力にスポットをあてた『WAON』は、今までにないおいしさ、楽しみ方に出会える場所です。

品種ごとに個性を活かした吉田屋ならではの梅干しや梅の品々を使ったお食事やスイーツなど、梅のメニューを存分に楽しむことができます。

『WAON』という名前の由来は、色々な音が集まっていい音を出す“和音”。

梅好きの人々がもっともっと集まるお店を作りたいということで、食事からデザートまですべてのメニューに梅を使い、食材もすべて茨城のものを使っているとのこと。

ちなみに、コーヒーだけはどうしても梅が合わなかったので、梅を使っていないそうです(笑)。

メディアでも紹介されるなど、全国初の梅専門カフェとして注目を集めている『WAON』。茨城を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてくださいね。

SDGsな商品開発にチャレンジ

そして現在、大山さんはまた一つ新たなチャレンジに取り組んでいます。

そのチャレンジとは、梅干しのパッケージに注目した新しい商品開発。環境にやさしいパッケージを開発し、SDGsな商品として販売をスタートしました。

大山さんがSGDsに注目したのは、地元である大洗の海の汚染がきっかけです。

まず自分にできることはないかと自社の商品にも目を向け、筑波大学のゼミと共同でブランディングの見直しを図り、学生さんからの提案を受けてパッケージのリニューアルが実現しました。

▲上段:赤色の箱は味付け(プレーン味)した梅干し/中断:黄色の箱は甘い味付けの梅干し/下段:青色の箱は無添加の梅干し

みなさんもご存知の通り、梅干しの容器というのはプラスチック製が主流です。つゆが漏れてしまったり、酸でやぶれてしまったりということがあるため、プラスティック製の容器が多く使われています。

この常識を打ち破り、プラスチックを使わないためにはどうしたらよいかを考え、およそ70%のプラスチックを削減した紙のパッケージを開発しました。

▲箱の中身ももちろん紙素材。右側の茶色の紙袋の中に梅干しが入っています

今後は、こちらの新しいパッケージでの組み合わせギフトなども考案中とのこと。

更なる進化から、今後もますます目が離せませんね!

おうちごはん編集部が食べてみた!

さて、ここまで吉田屋の梅商品についてその魅力をたっぷりとご紹介してきましたが、やっぱりまずは食べてみなきゃねということで、おうちごはん編集部も吉田屋人気の梅干しをいただいてみました。

お茶請けにそのまま食べても上品で美味しく、ごはんにのせても美味しい。もうこれは言うまでもありません。梅の品種や味付けによっても、また異なる味わいを楽しむことができるので、梅干しの食べ比べだけでもとても楽しい!

これはなかなか記事でお伝えするのが難しいので、ぜひ梅干し好きのみなさんは実際に食べてみて味わっていただくことをおすすめします(笑)。

ここでは、美味しい吉田屋の梅干しを使ったアレンジメニューをご紹介します。
※すべて味付けなしの無添加の梅干しを使用しました。

イカときゅうりの梅和え

きゅうりと梅干しといったら定番中の定番ですが、そこに海の香りをプラスしたくてイカ刺しを加えてみました。イカの食感と梅干しの塩気がよく合います!

かつお梅や甘めのはちみつ梅で作るのもおすすめ。イカの代わりに、ワカメなどの海藻を使ってみるのも良いかも!

材料(2~3人前)

・きゅうり……2本
・梅干し……2個
・イカ刺し……1PC
・白だし……小さじ1
・かつお節……適量
・海苔……お好み

作り方

1. きゅうりは拍子木切りにし、梅干しは種をとって包丁でたたく。

2. ボウルに材料をすべて入れて混ぜ合わせる。

鶏むね肉の梅味噌マヨ焼き

相性の良い梅と味噌を合わせ、そこにさらにマヨネーズをプラス。パサつきがちな鶏むね肉も、マヨネーズでコーティングすることで、しっとりとやわらかく仕上がります。

梅干しの塩気と味噌のコク、マヨネーズの酸味のバランスが絶妙で、白いご飯にぴったりのおかずとなりました。

材料(2人前)

・鶏むね肉……1枚
・梅干し……2個
・マヨネーズ……大さじ1
・味噌……小さじ1
・にんにくチューブ……1cm

作り方

1. 鶏むね肉を大きめのそぎ切りにし、梅干しは種を取って包丁でたたく。

2. ビニール袋に材料を全部入れてよく揉みこみ、10分ほどおく。

3. フライパンに2を入れて焼く。鶏肉のまわりが白っぽくなってきたらひっくり返し、全体に火が通ったら完成。

※マヨネーズを揉みこんでいるので油はひかなくても大丈夫ですが、くっつきやすい場合はサラダ油を少しひいて焼いてください。

梅ささみ茶漬け

やっぱり梅干しはごはんと合わせたい! ということで、王道のお茶漬けに。

あっさりとした鶏の出汁に、大葉やネギなどの薬味と海苔、ゴマをトッピング。梅干しの存在感もばっちりで、間違いのない一品です。

材料(1人前)

・鶏ささみ肉……1本
・梅干し……1個
・大葉……2枚
・ごはん……茶碗1杯分
・水……200ml
・塩……少々
・酒……小さじ1
・和風顆粒だし……ひとつまみ
・醤油……小さじ1/2
・万能ねぎ、海苔、ごま……お好み

作り方

1. 筋を取った鶏ささみ肉に塩と酒を揉みこんで少し置く。大葉は千切りにしておく。

2. 鍋に水を入れ、沸騰したら1を入れる。全体的に白っぽくなったら火を止め、余熱で火を通す。

3. 5分ほどしたら鶏肉を取り出し、粗熱がとれたら手でほぐす。

4. 鶏肉の茹で汁を火にかけ、和風顆粒だしと醤油を入れる。沸いてきたら火を止める。

5. 器にごはんを盛り、3の鶏肉をのせ、4をかける。大葉とお好みのトッピングをのせ、梅干しをのせたら完成。

美味しさを極めた本物の味を楽しもう

こんなにいろいろな種類の梅干しを食べたのははじめてでしたが、一つひとつ味わいが異なり、それぞれに異なる美味しがたっぷりと詰まっていました。この美味しさは、大山さんをはじめとする多くの皆さんが長年茨城の梅と向き合い、本物の味を求めてこだわり抜いた努力があったからこそできあがったもの。

他にはない、吉田屋の梅の美味しさをぜひ皆さんにも味わってみていただけたらなと思います。

茨城にある店舗で購入できるのはもちろん、オンラインでも購入可能です。

ぜひおうちで美味しい梅を楽しみましょう。

創業天保元年 吉田屋
吉田屋オンラインショップ | 創業天保元年 吉田屋
ume café WAON by 吉田屋 大洗(@umecafewaon)|Instagram

(text by まい姉)

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