ブーム到来!シュウマイの魅力とおいしい食べ方をシュウマイ潤さんが教えます

昔から愛されてきた中華料理の点心「シュウマイ」。いま、若い世代から注目されていて、ちょっとしたブームに!その火付け役ともいえるのが、「マツコの知らない世界」(TBS)でシュウマイの知られざる世界を披露したシュウマイ潤さん。今回は、そんなシュウマイ潤さんにシュウマイの奥深い魅力やおいしい食べ方をお聞きしました!

ようこそ、奥深きシュウマイの世界へ!

誰もが知っている中華料理の点心「シュウマイ」。ライバルといえば餃子で、その人気に押されがちでしたが、いま、シュウマイブームが来ていることを知っていますか?

白くて丸い見た目のかわいらしさから若い世代にも人気で、おうちで手作りシュウマイを楽しむ方が増加中。専門店も増え、これまでの常識を覆す“新世代シュウマイ”も登場しているんです。

シュウマイ研究家のシュウマイ潤さんいわく、最初に中国から日本にやってきたシュウマイを「第一世代」と定義すると、新世代のシュウマイは「第七世代」にあたるのだとか。

潤さんはそんなシュウマイの奥深い世界を一冊の本にまとめた『シュウマイの本』(産業編集センター)を出版。町中華の名物シュウマイ、ご当地シュウマイ、次世代シュウマイ 、冷凍食品の定番シュウマイなどなど、至高のシュウマイたちを大公開しています。

そこで今回は、人気上昇中のシュウマイをよりおいしく味わうべく、潤さんにオンラインインタビュー!

そもそもシュウマイ研究を始めたきっかけから、おいしいシュウマイが食べられるおすすめのお店、そしておうちでの楽しみ方までたっぷりとお聞きしました。

昔はシュウマイより魚が好きだった!?

――潤さんは生まれも育ちも神奈川で、幼少のころからシュウマイは身近な食べ物だったそうですね。やはり当時からシュウマイへの思い入れは強かったのでしょうか?

これがですね、あまりなかったんです。

「崎陽軒」の「シウマイ」をよく食べていたことは覚えているんですけど、じゃあ、いろんなごはんがある中でシュウマイが一番の楽しみだったかというと全然違いました。

もちろん、ネガティブな要素もないですよ。正直、普通でしたね。

――それは意外です。シュウマイ研究を始める前はどんなものを好んで召し上がっていましたか?

神奈川の中でも海沿いの町に暮らしていたのと親の影響もあって、魚ですね。

もちろん、お肉も好きなんですけど、外食するなら白いごはんと魚。あと小鉢があるようなお店が好きでした。

――中華よりも和食派だったんですね。そして2015年ごろからシュウマイを食べ始め、研究するようになったとか。そのきっかけとなったシュウマイがあったのでしょうか?

これっていうのは特になくて、むしろ、ないことに疑問を感じていました。

たとえば、ラーメン屋さんに行っても、サイドメニューに餃子はあるのにシュウマイはない。居酒屋さんも餃子が名物ですっていうから、シュウマイもあるかっていったらなかったり。

シュウマイを食べようと思ってもない状態が続いて、探し始めたのが2015年ぐらいかな。そのときにシュウマイって面白いかもって思ったきっかけは、現在豊洲に移転しているんですけど、当時は築地の場内市場にあった「やじ満」のシュウマイ。

1個がおそらく50g超はあって、子どものげんこつ以上のジャンボサイズなんです。「崎陽軒」ぐらいのサイズを想定して注文したので、初めて見たときはわりと衝撃でした。

シュウマイって、イメージしている以上のものがありそうだなっていう手応えを感じたのは、それからかもしれないですね。

実際、探してみると「やじ満」クラスは結構あるんです。100g超えもありますよ。

――「やじ満」のシュウマイ、気になります! 大きいシュウマイってなんだかワクワクしますね。ほかにもおすすめのお店を伺いたいのですが、オーソドックスなシュウマイを食べるならどこでしょう?

『シュウマイの本』にも書いたんですけど、僕の知っている限りの情報では、おそらく横浜の中華街が日本で初めて一般の人にシュウマイを提供し始めたさきがけなんです。

そのころから変わらず、当時のスタイルを貫いているのが「海員閣」「清風楼」のシュウマイかなと。

肉がしっかり練ってあるので、肉の繊維同士が絡み合って、まるで1個のお肉にかぶりつくみたいな、そういうシュウマイですね。味付けがシンプルなので、大きいですけど、しつこくないんです。

――じゃあ、まずこの2軒は行った方がいいですね。

中華街にはシュウマイを出すお店は多いんですけど、クラシックなものでいえばそこですね。

あと付け加えるなら、香港飲茶の食べ放題のお店「招福門」は、香港の点心をかなり忠実に再現していると思います。

中でも黒豚シュウマイは、本当にオーソドックスな中華の旨みがあって、日本人が好きなシュウマイというのをすごく象徴しているなと。

なによりグリンピースが真ん中にドーンとのっているビジュアルもいい。もし、シュウマイのバッチを作るならモデルにするといいと思います。

――では、変わりだねシュウマイでは?

本にも書いた新世代の「第7世代」と呼んでいるシュウマイは、かなり変わっているものが多いです。

その中でも個性があって、クオリティーも高いなと思うお店は、渋谷の「焼売酒場 小川」。岩中豚っていう岩手のブランド豚を使ったシュウマイもおいしいんですけど、仔羊や鴨を使ったジビエのシュウマイがあるんです。

ビストロのシェフだけあってスパイスの使い方も絶妙で、中華中華してないというか。和の要素も入れてたりして非常に面白いんですけど、シュウマイとしての完成度も高い。ワインにもよく合います。

あとはせっかくなので、大きいシュウマイのお店も紹介すると、阿佐ヶ谷にある「Gift食堂」。そこは、日本酒に合うシュウマイが食べられるお店で、シュウマイは1個100gの重量クラスです。

使っているお肉は鶏と牛のハイブリットかつ、鶏の軟骨も入っているので、食感もかなり面白い。

つけダレが2種類あって、その1つが餃子ではちょっとブームになった「酢ごしょう」なんですよね。これをつけると、不思議と日本酒が合うんですよ。これはすごい発見でしたね。

――まだまだ新しい発見がありそうですね。そんなシュウマイの魅力ってずばり、なんでしょうか?

ずばり……はいえないですけどね(笑)。まあ、あえていうとやっぱりやさしさですよね。あと懐の深さというか。

普通、肉料理のイメージといえばガッツリとかジューシーとか、食べ応えとかになりますけど、シュウマイって全てその対極にあるんですよね。こんなにやさしい味わいと食感の肉料理ってほかにないなと思って。

あと、懐の深さっていうのは、なんでも包んでしまう包容力と、どんな料理にも合うところ。

ほかの料理の邪魔をしないし、むしろ引き立てるので僕はバイプレイヤーと呼んでいます。そういう料理って実はそんなにないし、やっぱり実力がないとできない。大杉漣さんみたいだなと思います。

世界初!?シュウマイの専門書が誕生!

――そうして日夜、シュウマイと向き合う中で生まれたのが『シュウマイの本』ですよね。この本の企画を聞いたとき、どんなお気持ちでしたか?

最初はちょっとした本を作るぞ詐欺みたいな感じかなと……。あ、詐欺というよりは有料の出版ですよね。印刷費とかを出すから本を作らないかっていう、その手の本の依頼かなと思いました。

でも、どうやらそういう本を作っている会社さんじゃないし、どうなんだろうなって思いながら話をしていったら、いわゆる商業出版だったのでびっくりしました。

――びっくりしたのと同時に、うれしい気持ちもありました?

正直、うれしさというのはまだ実感がなくて、どちらかというと困惑というか……。

僕も仕事がら編集や執筆をしているので、いずれ本は書けたらいいなと思ってたんですよ。でも、まさかこんなに早くそういう依頼がきて、そこから半年ちょっとで本になるとは……。

――ずいぶん展開が早いですね。その短期間で一冊にまとめるのは大変だったのでは?

はい、大変でした。もしももう一冊書けっていわれたら……ちょっと考える時間がほしいですね。

あの入稿直前のキリキリした感じは……思い出したくもないです(苦笑)。担当編集者の方から「よくこんな短期間でやり切りましたね」ってほめられました。

――その苦労の甲斐あってといいますか、シュウマイを第一世代から第七世代に分けて紹介する構成が分かりやすく、とても読み応えがありました。『シュウマイの本』というタイトルもシンプルでいいですね。

最初はちょっと癖のあるタイトルの方が目を引くかなとも思ったんですよね。でも、これまでにシュウマイをテーマにした本がなかったので、そこは奇をてらわずにいこうと。

文化や歴史、お店の紹介などシュウマイと紐づくテーマであれば可能な限り詰め込んだシュウマイの本ということで、オールラウンドなタイトルにしました。

――こちらの本をどんな方にどんなふうに楽しんでもらいたいですか?

今回、図書館でも注文をいただいているのでお子さんにも読んでもらいたいし、もちろん、主婦の方にも。

日ごろ作ったり食べたりしているシュウマイへの興味が少しでも深まってもらえたらいいですね。あと、中華料理の研究家さんにとっても何か発見があったらいいなと。

本当そういう、ありとあらゆる方。シュウマイっていう単語を知っているんだったら、とにかく1回は読んでもらいたいですね。シュウマイが嫌いっていう人にも読んでほしいです。

おいしいシュウマイを作るコツとは?

――ご自分でもおうちでシュウマイを作られるそうですね。

シュウマイって実は作りやすいんですよね。僕みたいに多少料理をするぐらいで大した技術がなくても作れる。

ひき肉と玉ねぎと皮があればなんとかなりますから。

――おうちで餃子は作るけど、シュウマイはまだ作ったことがないという方も多いかと思います。シュウマイをおいしく作るコツはありますか?

まずは先入観を持たず、やってみようぐらいな気持ちで。餃子を握れる人ならシュウマイはそんなに難しくないんじゃないかな。

具体的なコツとしては、必要なものが3つあります。僕は3種の神器と考えているんですけど、まず1つ目はせいろ。やっぱりせいろで蒸すと、シュウマイの味が格段にアップします。

2つ目はへら。長さは大体20cmぐらいで横幅が2cmぐらいかな。中華料理の調理器具を売っているお店に売っています。木製やステンレス製があるんですけど、なんでもいいです。

あれでネタをぐっと持ち上げて皮にギュッと入れて、ギュッギュッと詰めればもうシュウマイっぽくなります。

そして3つ目は大き目の皮です。一般的なスーパーで売っているシュウマイの皮って薄くて小さいんですよ。それが多分、シュウマイ作りを難しくしている。しっかり大き目の皮を使うと包みやすいし、いわゆるビッグサイズのシュウマイがおうちで作れるからテンションも上がります。個人的には、八幡製麺所のシュウマイの皮がおすすめです。

この3つがあると、シュウマイはぐっと作りやすくなりますよ。

――なるほど! 具材はどんなものを入れていますか?

参考にしているのは、世田谷の上野毛にあった四川料理の「吉華(きっか)」のレシピです。材料は豚肉、玉ねぎ、刻み生姜、片栗粉、塩こしょうとシンプルなので、ほかの具材を入れたり、つけダレと合わせて楽しんだりと応用が利きます。

具材には、たけのこやれんこんを加えると食感が良くなっておすすめです。贅沢に、くわいを入れるのもいいですね。

あとはしいたけなど、きのこを入れると旨みが高まります。入れるときは刻んで、できれば水分をあまり入れないようにするのがポイントです。生よりは干ししいたけの方がいいと思います。

――つけダレは何がおすすめですか?

僕の場合、まずは何もつけずに味わいます。あとはやっぱり、醤油ですね。いろいろなつけダレや調味料を試したんですけど、やっぱり醤油ってすごいんですよ。オーソドックスなシュウマイには醤油が一番合うと思います。

ただ、試した中で合わないものってなかったので、あとは好みかなと。

――最近は市販の冷凍シュウマイもおいしいものが増えていますが、おすすめの食べ方やアレンジがあれば教えてください。

『シュウマイの本』にも書いたんですけど、蒸す以外をどんどん試してほしいですね。

僕がよくやるのは茹でです。シュウマイをそのままスープに入れちゃいます。そうすると、ボリュームのあるワンタンスープみたいになります。

冷凍のシュウマイって味の設計がすごくしっかりしているし、茹でても全然崩れないんですよね。中華スープでもいいし、白だしに入れてもおいしいですよ。

――簡単にできるのもいいですね。市販のシュウマイといえば、潤さんご自身も「メイドイン東京の会」とコラボして東京のご当地シュウマイを作られたとか。

僕はシュウマイの「第六世代」を全国のご当地食材を生かした「ローカルシュウマイ」と定義しているんですが、そういうのがもっと全国で増えるといいなと思っていて。

そのシンボルとなる東京のご当地シュウマイを作りたいと考えていたときに「メイドイン東京の会」さんと知り合ったんです。話してみたら結構ぽんぽんと決まって、形にすることができました。

特徴としては、東京のブランド豚「TOKYO X」と、東京都の木がイチョウなのでその実である銀杏をグリンピースの代わりに使っています。

東京の旨味が詰まったオリジナルシュウマイに仕上がりました。

オリジナル!東京シュウマイ - ミラクル - Food Business Factory

――ほかにもシュウマイ協会を立ち上げるなど、さまざまな活動を行なっていますが、2022年はどんな年にしたいですか?

まずは本を売りたいですね。

コロナの影響で2月に予定していたイベントは中止になっちゃったんですけど、この本をきっかけにシュウマイについてもっと掘り下げたいという人や興味があるっていう人に直接伝えられる場は作っていきたいなと思います。

少しでも多くの方にこの本を手にとってもらって、そして僕も豊かになると(笑)。

あとは、シュウマイ協会の活動ですね。これまでは食べる会を開いたり、ホームページで発信したりするだけでしたが、最近では協会に興味をもってくれるメーカーさんも増えているので、今年はもう少し活動が具体化していくのではないかと。

去年より今年の方がシュウマイに割く時間は増えるだろうなと思います。

――今後の活躍が楽しみです。最後に、潤さんにとって「シュウマイ」とは?

ねぇ、なんでしょうねぇ。

さっきのシュウマイの魅力に近いかもしれないですけど、「日本人の心」ですかね。やさしくて懐が深くてつつましくて。いまいち、自分を出し切れない。

シュウマイって、いい部分だけじゃなくて弱い部分も含めて日本人の国民性をすごく表現している食べ物だなって。最近は個性的なシュウマイも出てきましたけど、まだまだ全国には古き良きシュウマイが眠っていると思うので、探していきたいです。

それに今回、本を書いてみて、分かったことがあった一方で分からないことも増えてきたんですよ。いくつか仮説を立てたんですけど、文献がないので実地調査になるかなと。

――忙しくなりそうですね。

忙しいというか、勝手な活動ですよね、本当。でも、新たなことが分かれば、また伝えていきたいなと思います。

――そしたら2冊目が出ますね。

さっきもいったとおり、それはあまり考えたくないんですけど……。書くってことを考えるとテンションが下がるので、調べるぐらいにとどめておきます(笑)。

ありがとうございました!

『シュウマイの本』が絶賛発売中!

聞けば聞くほど、興味深くて奥深いシュウマイの世界。

『シュウマイの本』では、日本のシュウマイがどのように今日に至ったのかが詳しく紹介されています。それぞれの世代を代表するお店も載っているので、実際に訪れてみたくなるはずですよ。

また、中華せいろや皮、具、からしについてのコラムも読み応えあり。個人的には、中華せいろが欲しくなりました。

本書を読みながら、お店やおうちでシュウマイを楽しんでみてはいかがでしょうか!

産業編集センター

シュウマイの本

価格:1,760円(税込)

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シュウマイ潤さんプロフィール

シュウマイ潤

シュウマイジャーナリスト、研究家、日本シュウマイ協会発起人。

本名は種藤潤。1977年神奈川県生まれ。大学卒業後、フリーランスとして取材執筆を行なう。

2015年頃からシュウマイ研究を開始し、Instagram「シュウマイ生活」を中心に情報を発信。2021年9月現在までに、約1000種、約5000個のシュウマイを食べてきた。

2018年5月と2021年10月に「マツコの知らない世界」(TBS)でシュウマイの知らない世界を紹介。以後、さまざまなメディアでシュウマイについて語る。

2019年1月、「東京シュウマイ弁当」(オーガニックキッチン)を監修。2020年6月、シュウマイの活性化を、より多くの人や企業・団体とともに取り組むべく、「日本シュウマイ協会」のサイトをオープン。2020年7月、東京食材活性化を目指す「メイドイン東京の会」とコラボレーションした「東京焼売」を発売。毎月26(つつむ)日の「シュウマイを食べる会」開催、「シュウマイムーブメントプロジェクト」発起するなど、活動の幅を広げている。

シュウマイ生活(@syumai.life)のInstagram
日本シュウマイ協会 – No シュウマイ No Life

(text by コノ)

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